Column Interview

Special Interview 後編

Interview
Photographer 井上ユミコ × unoa Director 宇野澤

-Ballet×Fashion-

身体を纏うということ。
美しさを写し取るということ。

二つの視点が交わる、セッション。

【バレエダンサーの魅力】

Unosawa:
長くダンサーを撮り続けている中で、バレエダンサーの魅力はどこにあると思いますか?

ユミコさん:
私にとって、まず「美しい被写体」だった時代があるんです。
なんて美しい存在なんだろう、撮りたい、と被写体としての美に惹かれていた、

第1章みたいな時代があって。

でも今は第1章が終わっていて。
新たに「一緒に作品を作る相手」、「協働するパートナー」として惹かれています。

一つの目標に向かって力を合わせて、見る人が「わぁ!」と思うものを

共に生み出すことのできる相手。
私にとってそれは、ダンサーだからできることなんです。

バレエダンサーって、みんな真面目で、誠実に芸術に向き合っている。
バレエはノリだけでは頂上に到達できない世界だから、

本当に信頼できる人たちだと思っています。

被写体から、協働する相手へ。
そこが、今の私にとっての魅力です。

傑作を作るための最高の仲間、という感じですね。

Unosawa:
なるほど。ただ撮られるだけじゃなくて、自分からアウトプットをする、

対話ができるダンサーだからこそ、魅力を感じますね。

ユミコさん:

そうですね。一緒に仕事をするとなると、やっぱりクリエイティブな感性のある人は

いいですね。

ダンサーの皆さんって基本的に全員、いいものを作るために真剣じゃないですか。
そこを、私は一番リスペクトしています。

「あ、こんな種類の人たちが世の中にいるんだ」と思って。

Unosawa:
ダンサーへの深い愛情を感じてとても嬉しいです。

ユミコさん:
それはすごくあります。

私、コマーシャルの世界にいたじゃないですか。
コマーシャルの世界には、時代のムードやノリが大事なところもあるんですね。
もちろん花火のように瞬間に煌めくセンスや才能も大事だし、

テンションを上げていい写真を撮ることも大事なんだけど、

自分が真面目だからか、わーっと盛り上げて「OK!」みたいな感じが

居心地悪かったんです。

多分、似ているんだと思う。
突き詰め方とか、真面目さとかが。

Unosawa:

ユミコさんがバレエダンサーと波長が合うというのは、わかる気がします。

ユミコさんはダンサー以上に真面目な一面があると、感じました。

ユミコさん:
そうかもしれないですね。
だからこそ、バレエダンサーの人たちはみんな本当に素敵だなと思います。



【ダンサーをテーマに撮ってみたい作品】

Unosawa:
今後、ダンサーをテーマにどんな作品を撮ってみたいですか?

ユミコさん:
ヌードですね。
裸。もちろん隠すところは隠してほしいですけど(笑)。

若いダンサーに限らなくて。
先日、90歳くらいの元バレエダンサーの方とお話しする機会をいただいたのですが、

吸い込まれるような美しさがあって、「存在自体が芸術だな」と思ったんです。

Unosawaさんと一緒で、ご本人がとっても美しいんですよ。
その姿に、「撮るなら絶対ヌード」って思いました。

背中とかに、生きてきた証が見える気がして。


中村祥子さんも生き様の美がある方ですよね。だからレオタードや衣裳を纏う前の、

その人そのものを撮りたいなって思います。

今は信頼関係があるから、言わなくても脱いでくれる気がするけど(笑)。


Unosawa:
ダンサーの身体がアート。

ユミコさん:
そう。ダンサーの身体がアートだから、「あなたの存在自体が芸術なのだ」と

伝えられるものを、自分の作品としてやって行きたいです。

今年開設したこのスタジオは、自分の好きな自然光が入り、バックグラウンドも

自分のためのグレーを制作中で、ここで写真を撮り溜めていきたいなと思っています。

Unosawaさんもいつかヌードはいかがでしょうか(笑)。

Unosawa:
ちゃんと中身を肥やしておかないと。

ユミコさん:
全然、脱がなくてもいいんだけど(笑)

骨とか、佇まいの美しさみたいなものを、記録していけたらいいなって思います。

Unosawa:
機会があったら嬉しいです。



【美しいダンサーとは】

Unosawa:
ユミコさんが思う、美しいダンサーとはどんなダンサーですか?

ユミコさん:
ひたむきな人ですね。
特定の誰かというより、まだ上を目指している人を美しいなって感じます。

みんな綺麗なんですけど、ある程度いくと少し落ち着くじゃないですか。

ダンサーとして完成してくるというか。

でも完成した人には実はあまり興味がなくて。笑


完成された人よりも、自分を探している人、殻を破ろうとしてもがいている人を

美しいなって思ってるかもしれません。

そういう人の美しさが、私には見える気がするんです。

本人は気づいていないかもしれないけど、「あなたはこんなに美しいですよ」って伝えて、それを写真で見せてあげたい。

Unosawa:
もがいているダンサーにとって、すごく励みになる言葉だと思います。

現役時代に自分が聞いたら、泣いています。

ユミコさん:
でもたぶん、私はみなさんを俯瞰して見ている立場だから、冷静に見えるんだと思います。綺麗なんですよね、本当に。

Unosawa:
バレエって、正解がもう決まっているところがあるから、そこにならない自分に

課して、課して、 向き合っているので、「美しい」と言ってもらえるのはとても

嬉しいです。

ユミコさん:
本当にそうですよね。
でも、そういう人って必ず美しく撮れるんですよ。

逆に、完成している人だと、撮ってもあまり手応えがないことがある。
その人が写真に本気じゃない、という意味ではないんだけど、

どんなにやる気に満ち溢れていても、自分の正解の中に自分を閉じ込めている時は、

新しいものが生まれにくいと感じることがあるんですよね。わかります??


Unosawa:

はい。

もがいているダンサーたちはたくさんいて、

ユミコさんはその美しさを知っているからこそ、魅力を引き出して、

撮影していただけるんですね!

ユミコさん:
はい、それをやりたいです。
「あなたは美しいです」ということを、すごく伝えたくて。

Unosawa:
ダンサーたちにとって、 絶対自信になりますよね。

ユミコさん:
そうですね。
だから、もがいている人がいたら一度スタジオにいらしゃいませ、って思ってます。

Unosawa:
もがいているこだらけだと思う。

ユミコさん:
そういう人が一つステージを上がる時に、少しお手伝いできる気がするので、

それをこのスタジオでやりたいですね。

Unosawa:
「美しい」ってすごい言葉じゃないですか。
しかも、バレエの中で感じる美しさと、ユミコさんが言ってくださる美しさは

視点が違っていて、この答えを聞いて、心にぐっときました。

ユミコさん:
よかった。
でもそうかもしれないですね。バレエダンサーって、みんな少しネガティブで

自信がないところがあるから。

Unosawa:
ポジティブなんだけど、自分に対しては、というか。

ユミコさん:
そうそう。
「自分はまだ足りない」っていう、自己評価の低さがある。
でもそれってすごく大事なんですよ。すごく。

だから伸びるし。
最初ダンサーに出会った頃は、みんなこんなに美しいのに、

そのメンタルもったいないって思っていたけど、今はダンサーのことがわかってきて、

そうじゃないと磨き続けられないんだなって、気がついてきて。


ますます尊敬しています。

Unosawa:
心を込めて、ありがとうございます。

ユミコさん:
ダンサーを代表して。(笑)

Unosawa:
ダンサーだった。(笑)
代表して、ありがとうございます!




【撮影する時に大切にしていること】

Unosawa:
ダンサーを撮影する時に、大切にしていることはありますか?

ユミコさん:
なんて言うんだろう…
息を合わせるように、調和するように、という感覚ですかね。

今日みたいな撮影は、レオタードという主人公があるから、

ダンサーと一緒になってレオタードを輝かせるような感覚です。

一方で、自分の作品撮りみたいな、プライベートの撮影の時は、

今目の前の被写体のダンサーと息を合わせることを大事にしています。
その人の要素を感じること。

よく見て、話して、感じて、という感じです。

Unosawa:
今日もすごく見てくださっていましたよね。

ふたりをじっと見て感じ取って、「この瞬間がいいんだ」と、

見つけていらっしゃいましたよね。

ユミコさん:
あまり撮影中にディレクションはしないかもしれないですね。
「どうしたいのかな?」「こういう感じかな?」と見ていて、

やっているうちに「あ、ここいいんじゃない?」という瞬間が見つかったら、

そこからは一緒に1枚の写真のクオリティを上げていく。

最初は、その人がどうしたらどういう動きをするのかな、というのを見ていますね。

Unosawa:
感じ取る時間を作っている、ということですね。

ユミコさんとの撮影は、まさにダンサーの魅力を引き出すセッションでした。

「ALEXANDRE STUDIO AND LAB」は、まだ自分では気づけていない一面を

映し出してくれる場所だと感じました。

たくさんの質問に答えていただいて、ありがとうございました。

ユミコさん:

ありがとうございました。

身体を纏うこと。
その奥にある「その人そのもの」を感じ写し取ること。

ふたりのセッションから浮かび上がったのは、
ダンサーという存在の、誠実さと、ひたむきさ、そしてまだ見ぬ美しさだった。

それは完成された形ではなく、
今もなお、上を目指し続ける途中にあるもの。

だからこそ、美しい。


Interview Direction & Text:Nana Okuda

今回のインタビューを通して感じたのは、おふたりがダンサーに向けるまっすぐな眼差しと深い愛情でした。私は撮影やバレエの経験がなく、その感覚を実体験として持っているわけではありません。それでも、言葉の一つひとつから伝わる誠実さや、表現に向き合う姿勢に、強く心を動かされました。

いまこの世界に関わる立場として、これからは少し違う視点でダンサーや作品と向き合っていきたいと感じています。知らないからこそ見えてくるものも大切にしながら、その魅力を自分なりの言葉で伝えていけたら嬉しいです。


ALEXANDRE STUDIO AND LAB

高い天井、自然光、身体への負担を考えた床。
踊る人の身体と感性に寄り添う、品川区平塚のスタジオです。
写真家とダンサーの視点から、その人だけが持つ美しさを引き出すプロフィール撮影を行っています。表現する人のための撮影と空間を提供しています。
オーディション用、プロフィール、記念撮影、作品撮りにも。
レンタルスペースとしてのご利用も可能です。

ALEXANDRE STUDIO AND LAB
〒142-0051 東京都品川区平塚3-6-1 1F
https://www.alexandre-studio.jp

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